4.硫黄島の自然
 硫黄島は数ヶ月続いた爆撃や艦砲射撃と1ヶ月以上の激戦のために完全に焼け野原になり、地形さえ変わってしましました。しか し、亜熱帯性の気候は植物の生育を早めるのか、今では緑豊かなところもたくさんあります。その一方で火山島としての厳しい自然も見られます。ここではその 幾つかをお見せします。
森林 噴煙
木が生い茂る島の中央 部。戦死者の死臭を消すために米軍がねむの木を植えたり、種を播いたともいう。
戦前に硫黄の採掘場だった場所。ガスの臭いも強烈であり、付近の地熱も大変高い。
水蒸気
熱水
千鳥飛行場跡の近くの地熱ヶ原では水蒸気が激しく吹きあがっている。
温泉の湧きだしている池、温度が高すぎて入ることはできない。
ウズラ石

鶉石(うずらいし)

数千年前、硫黄島が火山活動により海中から隆起してきた時代に、火山爆発と共に噴出した灰長石の一種。地球上で硫黄島とイタリアのみに 存在するきわめて珍しい石である。

(南海岸にて採取)
海岸隆起

 手前に見えるのは米軍の上陸用舟艇の錨。写真の奥の方に注意されたい。

 この付近は現在、高さ15mの崖の上なのである。戦後50年の間にこの付近の地面が隆起を続け、当時の海岸は高い崖になってしまった のである。

 硫黄島の地形を変えたといわれる大激戦だったとはいえ、人間はしょせん、大自然の力には及ばないのである。

 なお、平成13年(2001)9月21日午後、硫黄島南東沖の海底で火山活動(海底噴火?)が起こり、周辺の海面が変色するな どの現象が確認された。硫黄島周辺での火山活動が観測されたのは19年ぶりであるが、その後、平成17年7月には南硫黄島沖で海底火山が噴火し、また、 18年には西海岸などで大規模な隆起が観測された。再び活動期に入ったのかもしれない。

  残念ながら写真はありませんが、幾つかの体験を。

  •  朝、出発前に案内の方が地面に卵を埋めていた。午前の見学を終えて掘り出してみると、見事に温泉卵にゆで上がっていた。硫黄島の平地は火山のカルデラ部 分にあたるので、地温もこのように高い。戦前はこの地熱を利用した製塩も行われていた。
  •  隊員のもう一つの楽しみはサウナである。海岸付近の斜面に横穴が掘ってあり、そこが地熱で天然のサウナになっているのである。中は50〜60度になるそ うで、私も入れてもらったがなかなかいける。木のベンチがあるが、あとは岩肌がむき出しになっている。暗いのが欠点である。
  •  島の一部には戦前、育てられていた果物などが自生している。実際にパイナップル・バナナ・オレンジなどが見られた。暑い気候のせいで、本土よりも味が濃 くなる作物が多いという。ただし、果実には亜熱帯性の害虫(ミカンコミバエ)が寄生している可能性があり、虫の拡散を予防するため、島外への持ち出しは禁 じられている。
  •  実はある場所に「月下美人」が群生している。硫黄島は目の悪い私でもプラネタリウムのように星がよく見えるところなので、開花期に行けば「満天の空の下 で咲き誇る月下美人」という夢のような光景を見られるそうだ。
  •  亜熱帯性のためか、スコールのような大雨もくる。私も2日目に大雨に遭い、四駆車が坂道でぬかるみにはまり、登れなくなったために皆で押して脱出した。
  •  河川などがないため、今も昔も硫黄島の水は雨水に頼っている。現在では飛行場などに降った雨を、約68,000トンの貯水能力を持つ貯水池に集めて使用 している。近年になり海水を真水に変える装置が導入されたため、かなり状況は改善されている。
  •  危険な動物もいる。小型で毒も弱いとはいえ、サソリがたまに見られる。また、初夏になるとサメが近海をうろつく。かつて硫黄島で働いていた方を私が取材 したところ、「素潜りをしていたらサメに襲われ、足ヒレを食いちぎられた」という体験談も。(現在、島の周辺は遊泳禁止だそうです。)
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1. 位置とあらまし   .  2.戦跡を訪ねて(その 1) 3.戦跡を訪ねて(その 2)
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4.硫黄島の自然    , 5.硫黄島写真館(その1) 6.硫黄島写真館(その2)
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7. 遺品返還の記   . 8.もう一人のメダリスト 9.硫黄島戦資料他   
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10.小笠原・火山 列島資料 11.エピローグ・・・   
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